第8回 世界毛髪研究会議 発毛エネルギーの調節機構を解明

By | 2014年5月17日

M-1開発チームでは、生体内でエネルギー生産を担う細胞小器官であるミトコンドリア(※1)の機能解析を行ってまいりました。

今回、毛包の形成、および、毛周期における成長期誘導因子であるPDGF-AA(※2)が毛乳頭細胞(※2)において、より多くのATPを産生する線維状ミトコンドリアを誘導することを見出しました。また、当社が開発した温泉原料である加水分解酵母エキスにPDGF-AAと同様のミトコンドリア活性化作用があることを確認し、当原料を使用したヘアケアラインナップの開発にも成功しました。

この研究成果を第8回 世界毛髪研究会議<2014年5月14日(水)~17日(土)、韓国、済州国際コンベンションセンター>において発表しました。

【研究の背景】

PDGF-AAが関与する毛包形成や毛周期の成長期では活発な細胞運動や細胞分裂が行われる為、多くのエネルギーが必要です。このような高エネルギー要求性の細胞機能にはミトコンドリアの機能制御が深く関わっていると考えられますが、今日まで推測の域を超えていませんでした。当社は、毛乳頭細胞においてPDGF-AAがミトコンドリアの形態と機能にどのような影響を与え、それらが細胞機能にどのように関連するのかを検討してきました。また、化粧品原料である加水分解酵母エキス(温泉酵母から調製)についても同様の検討を行い、ミトコンドリア研究に基づいた商品開発を展開しました。

【 研究成果の概要 】

(1) 毛乳頭細胞には線維状ミトコンドリアと円形ミトコンドリアが共存する

毛乳頭細胞(初代培養)のミトコンドリアを蛍光色素で染色して、蛍光顕微鏡観察したところ、細長い線維状のミトコンドリアと小さく丸まった円形ミトコンドリアの2種類が観察されました。線維状ミトコンドリアのみを持つ毛乳頭細胞、および、円形ミトコンドリアのみを持つ毛乳頭細胞は共に全体の約3割で、残りの細胞では、両タイプが混在することが明らかになりました。

(2) 線維状ミトコンドリアは活発な運動活性を有する

細胞のライブイメージングにより、線維状ミトコンドリアは細胞内を活発に動きまわることが判明しました。一方、円形ミトコンドリアはほとんど運動活性を有していませんでした。これらの結果は、ミトコンドリアの形態変化が分子モーターによる運動活性のスイッチとして機能することを示唆しています。

(3) PDGF-AAは線維状ミトコンドリアの割合を増やす

毛包の形成と毛周期の制御に関わるPDGF-AA(血小板由来成長因子)が、線維状ミトコンドリアを持つ毛乳頭細胞の割合と濃度依存的に増加する事を見出しました。

(4) PDGF-AAはミトコンドリアの酵素活性を促進しATP生産を増強する

PDGF-AAはミトコンドリアの酵素活性、および、ATP生産を促進する事が判明しました。この酵素活性とATP生産活性には線形的な関係が認められた事から、PDGF-AAはミトコンドリアを活性化させることにより、ATP生産を促すことが示唆されました。一方、PDGF-AAは、毛乳頭細胞の細胞増殖活性やミトコンドリアの膜電位、および、ROS発生量には影響を与えませんでした。

(5) PDGF-AAは毛乳頭細胞の遊走活性を高める

スクラッチアッセイにおいて、多くのエネルギーを必要とする細胞の遊走時には、線維状ミトコンドリアが優位になることが判明しました。PDGF-AA添加によりさらにその割合が増加し、毛乳頭細胞の運動活性も顕著に高まることが分かりました。この作用は、上記のPDGF-AAによるミトコンドリア活性化機構に基づくと考えています。

(6) 線維状ミトコンドリアが遊走中の毛乳頭細胞を支配する

スフェロイド(細胞塊)内の毛乳頭細胞では、円形ミトコンドリアが支配的であるのに対して、遊走中の毛乳頭細胞ではスクラッチアッセイ同様、線維状ミトコンドリアが著しく増加することが判明しました。毛乳頭細胞は遊走時には、ATPをより多く産生する線維状ミトコンドリアを利用することが示唆されました。

(7) 加水分解酵母エキスは線維状ミトコンドリアの量を増やす

当社では新規天然成分の探索、機能解析、および、それらを用いた商品開発を行っています。当社が温泉酵母を用いて開発した加水分解酵母エキスは線維状ミトコンドリアの量を増やす事が証明されました。

(8) 加水分解酵母エキスはミトコンドリアを活性化してATP生産を増強する

加水分解酵母エキスは、毛乳頭細胞のミトコンドリアの酵素活性を促進し、より多くのATPを産生させる事が判明しました。

(9) 加水分解酵母エキスは細胞遊走活性を促進する

加水分解酵母エキスが細胞の運動活性を高め、スクラッチアッセイにおいて傷の修復率を高めることを証明しました。以上の結果から、加水分解酵母エキスはPDGF-AA様の作用機構を有することが示唆されました。

【今後の研究】

今回、毛周期を司る毛乳頭細胞におけるミトコンドリアの制御機構の仕組みの一部が解明されました。今後もミトコンドリアの形態と機能、および、それらを制御する因子を網羅的に特定し、脱毛症をはじめとする各種疾患との関係を模索していく予定です。また、当社独自の温泉原料である加水分解酵母エキスがミトコンドリアの機能制御を介して細胞を活性化する事が判明したので、これを用いたヘアケア、スキンケア商品の更なる開発を進めていきます。

【発表者】

御筆 千絵、加世田 国与士 (いずれもサラヴィオ化粧品サラヴィオ中央研究所)

※1 ミトコンドリア
生命活動を維持するにはエネルギーが必要です。生体内のエネルギーとして知られるのがATP(アデノシン三リン酸、Adenosine Triphosphate)で、ミトコンドリアという細胞小器官で作られます。近年、ミトコンドリア研究が大きく飛躍し、多くの病気との関係が報告されています。ミトコンドリアの形態、および、その制御の分子機構が注目されるようになってきました。今後、ますますこれらの詳細が明確になることで、医療、健康分野への応用が期待されています。

※2 毛乳頭細胞とPDGF-AA
毛乳頭細胞は発毛シグナルの司令塔と言われ、常にヘアケア研究の中心的存在です。毛髪のヘアサイクル(成長期―退行期―休止期)は、毛包細胞間のシグナル伝達(細胞増殖因子などのやりとり)によって制御されています。それらのシグナル分子の中で、PDGF-AA(血小板由来成長因子)は、毛包の形成、および、成長期の誘導と維持に重要な役割を担っていることが分かっています。

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