第13回 日本再生医療学会総会 学術発表

By | 2014年3月6日

毛包再生医療で世界が最も注目する「スフェロイド」解析に成功!

M-1開発チームでは、毛包再生医療に向けて、毛乳頭細胞の一次繊毛の新しい役割を発見しました。繊毛制御シグナルの同定および分子機構の解明にも成功し、発毛調節機構として新規概念「マイクロセンサー理論」を提唱しました。

更に、毛乳頭細胞が集まった細胞塊(スフェロイド)を作ると一次繊毛は長くなり、センサー機能が増強され、より効率の良い細胞間情報伝達が促されることを見出しました。
毛包再生医療の最先端として注目を浴びている毛乳頭細胞スフェロイドにおける一次繊毛の役割の解明により、毛髪再生医療研究の更なる発展が期待されます。

この研究成果を第13回 日本再生医療学会総会<2014年3月4日(火)~6日(木)、国立京都国際会
館>において発表しました。

【研究の背景】

毛乳頭細胞は発毛シグナルの司令塔と言われ、常にヘアケア研究の中心的存在です。
毛髪のヘアサイクル(成長期 ― 退行期 ― 休止期)は、毛包細胞間のシグナル伝達(細胞増殖因子などのやりとり)によって支配されています。当社は、これまでに毛乳頭細胞の一次繊毛が毛母細胞(毛髪のもと)や線維芽細胞(毛髪の土台)の増殖に関わるという「マイクロセンサー理論」を提唱しております。

毛乳頭細胞が集まると細胞塊(スフェロイド)を作ります。試験管内で作成したスフェロイドを移植すると、毛包形成が誘導されることから、スフェロイドは毛包再生医療の分野では大変注目されています。そして、毛包誘導能力に優れたスフェロイドの開発は、今後ますます重要になることが予想されます。
今回、当社は、毛乳頭細胞がスフェロイドを形成すると(スフェロイド型毛乳頭細胞)では一次繊毛が長くなり、マイクロセンサーとしての機能が高まることを見出しました。事実、単層培養に比べて、スフェロイド型の毛乳頭細胞は細胞内情報伝達物質を効率的に放出して、線維芽細胞の増殖活性を高めることが確認されました。

【 研究成果の概要 】

(1)毛乳頭細胞(単層)の一次繊毛の蛍光顕微鏡観察、電子顕微鏡観察に成功

アセチル化チューブリン(繊毛マーカー)の免疫染色・蛍光顕微鏡観察により、培養毛乳頭細胞における一次繊毛の存在を確認しました。次いで、走査型電子顕微鏡を用いて、細胞表面から突き出ている一次繊毛の姿を明確に捉えることに成功しました。

(2)一次繊毛の長さ(繊毛長)の解析に成功

一次繊毛の高分解画像解析により、繊毛長を解析しました(2.2±0.7μm)。

(3)繊毛長の制御システムの構築

リチウムイオンを加えることで、繊毛長を約3倍伸ばすことを見出しました。また、繊毛形成に必須の遺伝子の発現を抑制することで、一次繊毛をほぼ消失させることにも成功しました。この系の構築により、毛乳頭細胞の一次繊毛を介したシグナル伝達機構の解明に道が開けました。

(4)繊毛を介したケラチノサイト(上皮系細胞)の細胞分裂増強作用を発見

繊毛長を伸ばした毛乳頭細胞の培養上澄み液に、ケラチノサイト(毛母細胞)の細胞増殖活性が認められました。これは、一次繊毛の伸長に依存して細胞増殖シグナルが放出され、ケラチノサイトの細胞分裂活性を促進したことを示唆するものです。

(5)繊毛を介した線維芽細胞(間葉系細胞)の細胞分裂増強作用を発見

上記と同様に一次繊毛を伸長させ、さらにDHT(男性ホルモン代謝物)を加えた毛乳頭細胞の培養上澄み液に、線維芽細胞の細胞増殖活性が認められました。一方、繊毛形成を阻害すると線維芽細胞の増殖は抑制されました。これは、一次繊毛が線維芽細胞の増殖シグナル放出機構に関与していることを示唆しています。

(6)bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)が内在性の一次繊毛伸長因子であることを発見

一次繊毛の長さを制御する生体因子の探索を行いました。その結果、毛乳頭細胞の一次繊毛の伸長因子として、bFGFを見出しました。bFGFは細胞増殖活性や細胞内情報伝達経路に関わる内在性のホルモンで、今回初めて一次繊毛との関係が明らかになりました。

(7)毛乳頭スフェロイド(毛乳頭細胞の塊)中の一次繊毛の解析に成功

毛包再生医療で最も注目されている一つに、毛乳頭細胞を塊状に集めたスフェロイドがあります。この毛乳頭スフェロイドは、移植により毛包形成を促す能力を有しています。スフェロイドの機能解析を進めることで、毛包形成能力を高まることが期待されています。今回、毛乳頭細胞をスフェロイドにすることで、一次繊毛の伸長が起こることを発見しました(3.7±1.1μm)。

(8)毛乳頭スフェロイドはより多くの細胞情報伝達物質を放出する

上記の結果は、毛乳頭スフェロイドにおいて、一次繊毛が積極的な役割を果たしているのではないかと考えました。そこで、単層培養の毛乳頭細胞とスフェロイド培養の毛乳頭細胞を準備して、それぞれの培養上清による線維芽細胞の細胞増殖活性を比較しました。その結果、特に細胞数が少ない場合において、スフェロイド型毛乳頭細胞の培養上清による著しい細胞増殖活性が認められました。この結果は、毛乳頭細胞がスフェロイドを形成すると一次繊毛の機能が高まり、より効率の良い細胞間情報伝達を行うことを示唆しています。

(9)マイクロセンサー理論(繊毛理論)を確立

以上の結果に基づいて、発毛の司令塔である毛乳頭細胞の一次繊毛が、毛母細胞や線維芽細胞の細胞分裂に関与しているとする「マイクロセンサー理論(繊毛理論)」を提唱しました。毛乳頭スフェロイドでは、マイクロセンサーの機能が向上して、高効率の発毛調整が行われます。

(10)加水分解酵母エキスが繊毛を伸長することを発見

当社では新規天然成分の探索、機能解析、またそれらを用いた商品の開発を行っています。当社が開発した加水分解酵母エキスが、毛乳頭細胞の一次繊毛を伸長する外因性の因子であることが解りました。

(11)加水分解酵母エキスが線維状ミトコンドリアの量を増やすことを発見

加水分解酵母エキスが、細胞内エネルギー産生装置であるミトコンドリアにどのような影響を及ぼすのかを調査しました。その結果、当原料の添加により、毛乳頭細胞内の線維状ミトコンドリア(運動活性が高い)の割合が増えることが判明しました。

(12)加水分解酵母エキスがミトコンドリアを活性化することを発見

加水分解酵母エキスが存在すると、毛乳頭細胞のミトコンドリアの膜電位が高まり、その結果、より多くのATP(細胞内のエネルギー)が産生されることを見出だしました。

(13)加水分解酵母エキスがFGF-10を増強することを発見

加水分解酵母エキスがケラチノサイト(毛母細胞:毛髪のもとになる細胞)の増殖を促進するFGF-10の増加を引き起こすことが明らかになりました。

【今後の研究】

一次繊毛の機能不全は、腎臓、肝臓をはじめとする多くの器官の疾患をもたらします。最近、癌や糖尿病との関係も報告されています。その為、一次繊毛の機能解析は、生命科学、および医学の分野において高い注目が集まっています。一方、毛乳頭細胞のスフェロイド研究は、毛包再生医療の分野では最先端を走っています。
今回、スフェロイド型毛乳頭細胞における一次繊毛の調節機構を解明し、発毛シグナル因子の関係を示唆することに成功しました。今後、更にシグナル伝達機構の詳細を明確にし、発毛機構の網羅的理解を目指します。当社が提唱する「マイクロセンサー理論」に基づき、毛包や皮膚の再生医療につながる技術、商品開発も進めてまいります。

【発表者】

松島 一幸、末松 実佳、御筆 千絵、加世田 国与士
(いずれも株式会社サラヴィオ化粧品 中央研究所)

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