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髪の老化対策に朗報!「糖化型脱毛症の発症機構」を解明

M-1開発チームでは、大分大学、久留米大学との共同研究でエイジング研究を進め、糖化物質(AGE)による脱毛・薄毛のメカニズムを解明しました。

年齢とともに増加する終末糖化産物(AGE)は多くの老化現象に深く関与していることが知られていますが、これまでにAGEと毛髪成長および脱毛症の関係は未知のままでした。
私たちは発毛の根幹をなす毛乳頭細胞の機能や間葉系 ― 表皮系相互作用に及ぼすAGEの影響についての調査を行ってまいりました。
その結果、AGEは毛乳頭細胞において、主にROS-NF-κB経路を介して炎症性サイトカインの発現を増強させることにより、毛母細胞の増殖を抑制することが判明しました。

以上のことから、AGEは年齢とともに進行する脱毛の原因物質の1つであると結論しました。
この研究成果は2015年9月21日付で、国際科学雑誌「European Journal of Dermatology(欧州皮膚科学誌)」[volume 25, issue 4, July-August 2015, p.359-361]に掲載されました。

【研究の背景】

AGE(Advanced Glycation End-products、終末糖化産物)は糖とタンパク質、核酸、または、脂質の非酵素反応による結合、すなわち、糖化によって生成される最終産物の総称を指します。
AGEは加齢にともない体内に蓄積し、炎症性サイトカインの発現を亢進させることで、様々な細胞機能にダメージを与えることが知られています。これにより、AGEは老化に関連する認知症や動脈硬化性疾患等の発症・進行に関与するため、老化物質の1つと考えられています。

老人性脱毛症や男性型脱毛症の発症率も年齢とともに高まります。頭部全体における毛包のミニチュア化や毛髪の細毛化を特徴とする老人性脱毛症は50-60歳頃から発症します。その原因として、ミトコンドリア機能の低下や酸化ストレスの増加が示唆されています。
一方、男性型脱毛症は頭頂部と前頭部における毛包のミニチュア化を特徴とします。その作用メカニズムとして、男性ホルモンが毛乳頭細胞に作用し、TGF-β1、DKK-1、IL-6等のサイトカインを過剰分泌させ、これらが毛母細胞の増殖を抑制することが知られています。男性型脱毛症の発症も老化と関連しています。

老人性脱毛症や男性型脱毛症だけでなく、女性型脱毛症などの発症においても、老化との関連性が示唆されますが、これらの脱毛症と糖化現象との因果関係は調べられていません。
今回、私たちは、世界に先駆けて糖化と脱毛症の関連性を調べる研究に着手し、AGEが間葉系 ― 表皮系相互作用に変調をきたし、脱毛を引き起こすことを見出しました。

【研究成果の概要】

(1) AGEは毛乳頭細胞や表皮ケラチノサイトの増殖には影響を与えない

毛乳頭細胞、あるいは、表皮ケラチノサイト(毛母細胞のモデルとして使用)をAGE含有培地で培養しても、それらの細胞増殖活性に変化はありませんでした。

(2) AGEは間葉系 ― 表皮系相互作用を阻害する

毛乳頭細胞(間葉系細胞)をAGE含有培地で培養し、その培養上清を用いて表皮ケラチノサイト(表皮系細胞)を培養すると、その増殖活性は有意に抑えられました。このことから、AGEは毛乳頭細胞に働きかけ、何らかの脱毛シグナルを分泌し、この阻害因子が毛母細胞の増殖を抑制することが示唆されました。

(3) AGEは毛乳頭細胞における炎症性サイトカインの発現を増加させる

上記の脱毛シグナル因子の正体を解明するために、AGEを作用させた毛乳頭細胞の遺伝子発現解析を行いました。その結果、AGEは脱毛因子として知られている一連の炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)の発現を濃度依存的に増加させることがわかりました。

(4) AGEはNF-κBを介して炎症性サイトカインの発現を増強する

AGEによる炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)の発現は、NF-κB阻害剤により抑制されることを確認しました。この結果は、AGEで惹起された炎症性サイトカインの発現はNF-κB経路を介していることを示唆しています。

(5) AGEは毛乳頭細胞内の活性酸素種(ROS)を増加させる

AGEは毛乳頭細胞内においてROS量を増加させることがわかりました。

(6) AGEはROSを介して炎症性サイトカインの発現を増加させる

AGEによって増加した細胞内ROSが炎症性サイトカインの発現に関与しているかどうかを確認するために、ROS阻害剤を用いた実験を行いました。その結果、ROS阻害剤は、AGEによって誘導される炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8)の発現を抑制しました。これらの結果から、AGEは主にROSを介して炎症性サイトカインの発現を増加させることが示唆されました。

【今後の研究】

本研究では、エイジング研究の観点から糖化と脱毛症の関連性を調査しました。年齢に伴って増加するAGEが脱毛症の原因物質になるという可能性を示し、糖化による新規の脱毛症発症機構を提唱しました。今後も、AGEによる脱毛のさらなる作用メカニズムの解明や、AGEと炎症性サイトカイン以外の脱毛因子との関連性等について調査していく予定です。別途、既に別府温泉で発見した温泉藻類から作製した温泉藻類(RG92エキス)がAGEによる発毛抑制作用を解消することを見出しております。これらの研究成果に基づき、糖化誘導性の脱毛症に特化したヘアケア商品の開発にも着手していく予定です。

【発表者】

<久留米大学 医学部 糖尿病性血管合併症病態・治療学講座>
松井 孝憲
山岸 昌一

<大分大学 医学部 マトリックス医学講座>
北村 裕和
吉岡 秀克

<株式会社サラヴィオ化粧品 サラヴィオ中央研究所>
宮田 光義
御筆 千絵
加世田 国与士